02−01−3;胃十二指腸疾患
胃ポリープ
- 内視鏡検査の5〜7%で発見。
- 過形成性ポリープ、胃底腺ポリープ、腺腫性ポリープ(良/悪性境界病変)
胃底腺ポリープ(fundin gland polyp;FGP)
- 上部消化管内視鏡検査の1〜5%で発見(もっと多いとも)。
- H.pylori感染胃粘膜にFGPが発生することはまずない。(H.pyloriの感染が前庭部に限局していて、FGPが発生する体部に感染が及んでいない場合はある)
- 成人になってからH.pylori感染は稀で(1%以下)、FGPが消失することは少ない。
- PPI長期投与により数、大きさ、発生の増加が報告されている。
- 多数観察された場合は家族性ポリポーシスの可能性を考え大腸内視鏡検査が勧められる。
過形成ポリープ
- 大きくなるにつれて出血と癌化の問題がある。増大したポリープでは表面が脆く、出血を伴い貧血の原因となりえる。過形成性ポリープに癌が存在する頻度は全体では0.6〜2・1%とされているが、1cm以下ではほとんど見られず、1〜2cmで0.9%、2cm以上では8%と言われている。1cm以上では内視鏡切除を勧める。
胃がん
- 数十年来、年間五万人が亡くなっている。(毎年25万人が発症。最近は毎年13万人が罹患(H30)))
- 胃がん患者の98%がピロリ菌の感染者である。
- 50歳以上が胃がん患者の97%を占める。
ピロリ菌
- 20歳以下のピロリ菌感染率は約5%にとどまる。感染は5歳以下で起こり、成人には一時的に感染が起きても持続感染することは少ない。現在の感染経路は家庭内感染が80%である。井戸水や上水道などの水系感染はほとんどない。
- 除菌で胃がんが抑制できる割合(仮説);40歳台まで90%以上、50歳台男73%、女90%。60歳代男47%、女82%。70歳代以降男43%、女70%。リスクは総じて1/3以下になる程度。
- ピロリ菌の除菌による逆流性食道炎の悪化や治療への影響はない(2012年にGutから発表された欧州のConsensus Reportの推奨)。GERDは起きても一過性で比較的軽いとされる。
- ピロリ菌の陽性者は陰性者の1.4倍(4.7年観察)〜6倍(7.7年観察)の胃がん発生リスク(観察期間を長くすればもっと高い数値が予測される)
- 2013年除菌が保険適応になった。
- 除菌後の菌の再出現率は1%以下とされている。
- 2008年に35歳以上を対象とした2万1144人のピロリ菌抗体価を調べたところ、30歳代18%、40歳代22.9%、50歳台37.4%、60歳代で約半数、70歳代で約70%と高齢者ほど感染率が高かった(東京医大内視鏡センター)
ペプシノゲン値
- 血清PGI値が70ug/l以下、かつI/II比が3.0以下が胃がんのハイリスク群の絞り込みに有効
- PG検査異常者がピロリ菌陽性であると胃がん発生リスクは15倍程度に上昇。
胃粘膜下腫瘍
- 2000年頃から粘膜下腫瘍の考え方が大きく転換し、3cmを超える胃粘膜下腫瘍の80%が消化管間質腫瘍(GIST)であることが明らかにされた。
GIST
- 消化管カハール介在細胞(ペースメーカー細胞)由来腫瘍で、従来の病理診断にかかわらずKIT陽性であればGISTと診断される。
- 欧米では症状があって内視鏡検査で発見されるので5cm以上が多い。
- GISTと診断されても原発臓器により増大速度、転移リスクは大きく異なり、小さい胃GISTのリスクは通常は極めて低い。5cm程度までは定期的な経過観察も可能で、特に悪性度リスクの低い場合は経過観察のみでもよい。
- 胃では穹隆部から胃体上部に多く、胃体下部や幽門部では比較的頻度は低い。なお臓器別発生頻度は胃が60〜70%、小腸20〜30%、大腸5%。
- リンパ行性転移はほとんどないため、系統的リンパ節郭清を伴う手術は不要である。
- 大多数の未治療のGISTでFDG取り込みを示す。CTやMRIで確認できない腹膜播種病変等を検出することも可能である。
- GISTは原則として血行性転移を示し、その90%以上は肝転移である。稀に肺、骨、副腎等に転移する。
- イマチニブ耐性GISTに対してはスニチニブ(マルチキナーゼ阻害薬)の投与が推奨される。
胃炎
A型胃炎
- 胃壁細胞に対する自己免疫疾患であり、それにより胃酸分泌が低下することにより、ガストリンが高値となり、enterochromaffin cellが刺激され、カルチノイドの発生をもたらす疾患。H.pyloriとは無関係
機能性ディスペプシア
- RomeIII基準では食後膨満感、早期満腹感、心窩部痛、心窩部灼熱感の4つの症状を機能性その症状に限定しており、前二者を有する患者をPDS(post-prandial
distress syndrome, 食後愁訴症候群)、後ろ二者を有する患者をEPS(epigastric pain syndrome, 心窩部痛症候群)としている。
- 食思不振はディスペプシア症状に含まれない。
- 胃運動機能異常と内臓知覚過敏が直接的に腹部症状発現と関連する因子であり、胃酸過多、H.pylori感染、精神心理因子は間接的に症状発現を修飾する因子である。